日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、肌においてDNAを修復する酵素が加齢に伴って減少することを発見しました。また、DNA修復酵素が減少した細胞では、老化を進行させる一因となる炎症性サイトカインやコラーゲン分解酵素の分泌が増加していました。このことから、DNA修復酵素の減少は、肌の老化を加速させると考えられました。そこで、DNA修復酵素を増やす素材を探索したところ、生薬である霊芝から亜臨界水抽出技術により抽出したエキスに優れた効果を見出しました。DNAの損傷を修復し、肌の老化を防ぐ成分として期待されます。
肌は紫外線などの刺激に常にさらされており、細胞のDNAは日々損傷を受けています。DNAが損傷を受けると、コラーゲンやうるおい成分などの美しい肌を維持するために必要なタンパク質が生成されにくくなります。しかし、肌には損傷したDNAを修復する酵素が存在しており、DNAを絶えず修復しているため、肌の状態が維持されています。今回、肌において、DNA修復酵素が加齢に伴い減少することを発見しました。さらに、DNA修復酵素の発現が低下した細胞を解析すると、炎症性サイトカインやコラーゲン分解酵素が増加していました。このことから、肌におけるDNA修復酵素の減少は、美肌に必要なタンパクの生成を妨げるだけでなく、炎症やコラーゲン分解を引き起こし肌の老化を加速させると考えられました。
また、DNA修復酵素を増やす素材を探索した結果、古くから生薬として珍重されてきた霊芝(黒霊芝および赤霊芝)の亜臨界水抽出物※1に、優れた効果を見出しました。つまり、この抽出物は、肌のDNA修復機能を高めて老化を防ぐ効果があると期待されました。
本研究成果は今後、基礎化粧品の開発へ応用していきます。なお、本研究成果は2024年10月14日から17日にかけてブラジルのイグアスで開催された第34回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会にて発表しました。
※1 高温・高圧状態(亜臨界状態)の水で成分を抽出する特殊な抽出方法により得られたエキス。
<参考資料>
1.加齢に伴う肌のDNA修復酵素の減少
肌におけるDNA修復酵素(NEIL1、ERCC1)※2の加齢変化を調査した結果、年齢が高くなるにつれて、DNA修復酵素が少なくなることがわかりました。つまり、加齢によって肌のDNA修復機能が低下すると考えられました。
※2 実験は複数のDNA修復酵素で実施。本リリースでは、代表としてNEIL1、ERCC1の結果を示す。
2.DNA修復酵素の減少が肌の老化につながる
肌の細胞(表皮角化細胞、真皮線維芽細胞)のDNA修復酵素(NEIL1、ERCC1)の発現量を人為的に減少※3させた結果、炎症性サイトカイン※4であるIL-6やIL-8、コラーゲン分解酵素であるMMP-1の発現量が増加することがわかりました。すなわち、DNA修復酵素が減少することで炎症やコラーゲン分解が引き起こされ、肌の老化が進行すると考えられました。
※3 特定の遺伝子に合わせて作製した短いRNA鎖を細胞に作用させ、特定の遺伝子の発現量を減少させるRNA干渉を用いた。
※4 炎症反応を誘導する細胞間伝達物質の一群。炎症反応の中心的役割を果たす免疫細胞を引き寄せ、その働きを活性化する。
3.霊芝の亜臨界水抽出物が細胞のDNA修復酵素を増やす
細胞のDNA修復酵素を増やす素材を探索したところ、古くから生薬として珍重されてきた霊芝(黒霊芝および赤霊芝)から亜臨界水抽出技術により抽出したエキス(亜臨界水抽出物)に肌の細胞のDNA修復酵素を増やす効果があることを発見しました。
表皮角化細胞および真皮線維芽細胞に黒霊芝・赤霊芝の亜臨界水抽出物を添加し、DNA修復酵素の遺伝子発現量を測定したところ、黒霊芝亜臨界水抽出物によってNEIL1、赤霊芝亜臨界水抽出物によってERCC1の遺伝子発現量が増加しました。これらの結果から、霊芝の亜臨界水抽出物には、DNA修復酵素を増やし、肌の老化を防ぐ効果があると期待されました。