電車の中や車の運転中、突然の動悸や息苦しさ、冷や汗に襲われた……。
こうした症状に襲われる「パニック発作」は、1年のうちに少なくとも11%の成人が経験するとのデータもあるくらい、誰にでも起こりうるものです。(※1)
命に関わるものではありませんが、進行すると「パニック症」というさらに深刻な症状を発症することも。
パニック症は男性より女性に多いとされているため、発作を経験したことがある女性のみなさんは、これ以上進行させないようにすることが大切です。
この記事では、パニック発作のメカニズムと、発作のセルフケア方法、そして心を守るための薬での対処について解説します。
パニック発作とは? 正しく知ることが不安軽減の第一歩

パニック発作という言葉は知っていても、実際にはどんな仕組みで起きるのか、知らない人もいるでしょう。
理解が深まるだけで、「この反応には意味があるんだ」と安心できることもあります。
パニック発作が起きる要因
パニック発作は、脳の「扁桃体」が誤って危険を感知し、自律神経のうち交感神経が急激に活性化することで起こります。本当は安全な状況なのに、“危険が迫っている”と脳が勘違いした結果、心拍数が上がったり、呼吸が浅くなったりするのです。
危険がない状況で発作が起こるため、体験した人は理由がわからず強い恐怖心を感じることがあるといわれていますが、これらの発作はからだがあなたを守ろうとしている反応です。
そう思うだけでも少し安心できるのではないでしょうか。
パニック発作の症状
パニック発作では強い恐怖や不快感にくわえて、次のような症状があらわれます。
・胸の痛みまたは不快感
・窒息感
・めまい、ふらつき、または気が遠くなる
・動悸または頻脈
・息切れまたは呼吸困難
・発汗
これらの症状は、交感神経が過剰に反応した結果、起こる症状です。数分でピークに達し、数分で自然に治まることが多いとされています。
不安をやり過ごすためのセルフケア

「発作が起きたらどうしよう」と思うだけで不安になってしまうもの。そこで、落ち着きを取り戻すためのコツを知っておくことが、恐怖をやわらげる手助けになります。
「4-7-8呼吸法」で不安を和らげる
呼吸が浅く速くなると、過呼吸になりやすく、さらに息苦しく感じてしまいます。そんなときにおすすめなのが「4-7-8呼吸法」です。
・4秒かけて鼻から息を吸う
・7秒間、息を止める
・8秒かけて口からゆっくり吐く
これを3〜5回ほど繰り返すと、副交感神経が優位になってリラックスしやすくなります。
「5-4-3-2-1法」で意識を逸らす
強い不安に飲み込まれそうなときには、「5-4-3-2-1法」という方法で意識を逸らしてみましょう。
次の順番で五感に意識を向けてみてください。
・見えるものを5つ挙げる(窓の外のビル、壁の時計など)
・聞こえる音を4つ挙げる(電車の音、空調の音など)
・触れられるものを3つ挙げる(服の感触、足が床につく感覚など)
・においを2つ挙げる(コーヒーの香り、香水のにおいなど)
・味わえるものを1つ挙げる(ガムの味、口の中の味など)
意識が「今この瞬間」に集中できるようになり、頭の中の不安な想像から離れることができます。
「現実に戻る」練習だと思って、静かに試してみましょう。
冷たい水を飲む・手や首を冷やす
発作のときはからだが熱っぽくなっているため、冷やすことが効果的です。冷たい水を少しずつ飲んだり、ハンカチを濡らして首を冷やしたりしてみましょう。
冷たさを感じると、意識が切り替わり、心とからだのバランスも整いやすくなります。
外出中でも実践できるように、水筒などを用意しておくのもおすすめ。いざというときにすぐ対処できるよう準備しておくことが、安心感につながります。
つらいパニック発作には薬での対処も

「薬に頼るのは抵抗がある」と思っている人もいるかもしれません。
でも、心が疲れたときに薬の力を借りるのは、悪いことではありません。むしろ「自分を助けるための大切な選択」と考えてくださいね。
抗うつ薬・抗不安薬でコントロールする
医師からパニック発作やパニック症との診断を受けた場合、症状に応じて抗うつ薬や抗不安薬が処方されます。
これらの薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整え、過剰な不安反応を抑える作用があり、不安な気持ちをコントロールしてくれます。
ただし、これらの薬は眠気や記憶障害などの副作用が起こることも。医師と相談しながら、自分に合った薬を服用することが大切です。
漢方薬を活用する
心の不調を感じているときは、心療内科でも自然由来の治療薬として処方されている漢方薬を活用するのもひとつの方法。
心の不調には、「気分の落ち込みを改善する」「血流をよくして自律神経の乱れを整える」「イライラや精神の緊張を鎮める」といった働きをもつ漢方薬を選び、根本改善を目指しましょう。
<心の不調におすすめの漢方薬>
・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼうれいとう)
神経の高ぶりを鎮め、不安を取り除いて、不安定な精神症状を落ち着かせます。神経が過敏になることで起こる不眠やイライラなどがある方におすすめです。
・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
喉や胸部に滞った気を取り除き、精神の緊張をゆるめます。気分がふさぎ、喉や食道部に異物感があり、動悸やめまい、嘔気などがある方におすすめです。
このような漢方薬の服用によって心とからだのバランスを整えると、心の不調の根本的な改善が目指せます。
ただし、漢方薬を飲むときは自分の体質に合うものを選ばないと、思わぬ副作用が出ることがあります。
そこで、漢方薬を選ぶ際におすすめなのが「あんしん漢方」という漢方薬専門のオンラインサービス。薬剤師が最新のAIを用いて最適な漢方薬を提案してくれるので、誰でも安心して服用できますよ。
パニック発作について正しく知ろう!
パニック発作は誰にでも起こりうるものですが、正しい知識とセルフケアで不安は軽くできます。無理せず、自分をいたわる気持ちを忘れずに過ごしましょう。
【参考文献】
(※1)MSDマニュアル家庭版 パニック発作とパニック症 パニック発作とパニック症 - 10. 心の健康問題 - MSDマニュアル家庭版
<この記事の監修者>

横倉恒雄(よこくらつねお)医師
婦人科・内科・心療内科医
医学博士/医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。病名がない不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書に『脳疲労に克つ』『心と体が軽くなる本物のダイエット』『今朝の院長の独り言』等がある。クリニックで行っている『しなやか更年期サロン』はオンライン参加もあり、外来では時間がなく聞けない質問等もゆっくり教えてもらえると好評。
<漢方監修>

木村 英子(きむらえいこ)
あんしん漢方薬剤師
北里大学薬学部・東京大学大学院医学系研究科卒。臨床検査技師。
厚生労働省検疫所・病院にて公衆衛生・感染症現場を経て、インドアーユルヴェーダの権威ミーナクシ・アフジャ博士に師事。
対症療法ではなく体質を根本改善することの重要さを痛感し、西洋医学をベースに東洋医学からのアプローチを取り入れ、アロマやハーブを活用した情報発信を行う。
症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホひとつで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行っている。
