主役はあんこじゃない。栗を「前に出す」と決めた、お亀堂の発想

どら焼きといえば、あんこが主役というのが定番です。栗入りどら焼きでも、刻んだ栗や甘露煮が「あんこの中に混ざっている」ものがほとんど。でもお亀堂が目指したのは、そこからの逆転でした。
栗は刻まない。丸ごと一粒を、どら焼きの中心に。
熊本県産の新栗の中からさらに大粒のものを選び抜き、皮むきから特製の蜜漬けまでを自社で一貫して行います。仕入れるのは生栗のまま。完成された栗加工品ではなく、届いた栗を自分たちの手で仕上げることで、「栗そのもののおいしさを、できるだけ生かしたい」という思いを形にしています。
お客様からは「栗がおいしい」「ほかの栗どら焼きとは全然違う」という声が届いているといいます。その声こそが、栗を丸ごと使うというこだわりが報われた瞬間です。
一粒ずつ、人の目と手で。チームが育てる「おいしさ」の工程

栗を選ぶ人、皮をむいて蜜漬けにする人、生地を焼いて仕上げる人——一つの「極み栗どら焼き」は、複数のスタッフの手を渡りながら完成します。
特に手間をかけているのが栗の選別です。大粒のものを仕入れた後も、一粒ずつ大きさや形を人の目と手で確認。揃った栗だけが次の工程へ進みます。微妙な焼き加減や蜜漬けの仕上がりが最終的な味を左右するため、チーム全体で「お客様にどんなおいしさを届けたいか」を共有することを大切にしているといいます。
「この商品であれば、丸ごとの栗の存在感と、ほっくりとした食感。そこが共有できていると、一つひとつの作業で何を大切にすべきかが、はっきりします」と森さんは話します。販売スタッフが受け取った「栗がおいしかった」というお客様の声を製造側にも届けているのも、そのためです。喜びが次の一粒の丁寧さにつながっていく——そんなチームの空気が、この小さなどら焼きを支えています。
秋だけ、新栗だけ。「極み」の名を冠した、お亀堂の秋の物語

「極み栗どら焼き」の「極み」という言葉には、素材も手間も惜しまないという覚覚悟が込められています。
この商品が作れるのは、その年の秋に新栗が届く短い期間だけ。旬の素材を、旬の時期に、一番おいしい和菓子にして届けるというシンプルな思いが、この季節限定という形を生んでいます。
秋には「極み栗どら焼き」とあわせて「【極】栗蒸し羊羹」も展開しています。商品全体の約60%が国産栗で構成された羊羹は、「どこを切っても栗が現れる」ように設計されており、職人歴45年の和菓子職人が自家製こし餡とのバランスを整えた一品。温かいお茶とともに、秋の味覚をじっくりと楽しめます。
1950年の創業から、お亀堂は「和菓子への挑戦と革新」を掲げ続けてきました。「毎年秋になったら、また食べたい、と思っていただける秋の名物に育てたい」——森さんのその言葉には、一粒の栗を大切に届け続けることへの、静かな決意があります。