【INTERVIEWEE】
ヘリ・ヨケラ(Heli Jokela)氏
Visit Tampere(タンペレ観光局) マーケティング&コミュニケーション部門ディレクター
【INTERVIEWER】
高部(シンデレラフィット編集長)
WOWOWの国際共同製作ドラマ『BLOOD & SWEAT』の舞台としても注目を集める、フィンランドの都市「タンペレ」。今回は、世界のサウナ首都と称されるこの街が持つウェルビーイングの思想と、現代の忙しい女性たちに提案したい「タイムレスな美しさ」の秘訣について、Visit Tampere のヘリ・ヨケラ氏にお話を伺いました。
1. 心と体を洗い流す、ウェルビーイングの原点としての「サウナ文化」

Finlayson(フィンレイソン地区) クレジット: Visit Tampere
何の役割も求められない、ありのままの自分に戻る「空白の空間」
編集長 高部(以下、高部): タンペレは「世界サウナの首都」として称賛されていますが、それは単に施設が充実しているからだけではない、本質的なアプローチがあるからだと私たちは考えています。日々の暮らしの中で内なる健康(ウェルビーイング)を育むために、現地の女性たちはどのようにサウナを楽しみ、どのような「サウナマインドセット」を持っているのでしょうか?
ヘリ・ヨケラ氏(以下、ヨケラ): フィンランド人にとって、サウナは贅沢品でも特別なイベントでもありません。日々の暮らしの一部であり、文化遺産に深く根ざした、心と体の両方をケアするための大切な方法です。
サウナを特別なものにしているのは、その根底にある「マインドセット」にあります。成果を競う場所でも、美の基準を満たす場所でも、一過性のトレンドでもありません。ただスピードを落とし、自分の声に耳を傾け、自然なリズムへと戻っていくための場所なのです。
現地の女性たちの多くは、体を温め、澄んだ空気や湖の水でクールダウンし、心を穏やかに落ち着かせるという「静かな儀式」としてサウナを楽しんでいます。何かを達成しなければならないプレッシャーも、完璧に見せなければならない義務もありません。
「サウナは体だけでなく、心も洗い流す」
忙しい現代社会を生きる女性たちにとって、サウナは何の役割も求められない、とても貴重な「空白の空間」になってくれます。深いリラクゼーション、血行の促進、質の高い睡眠、そしてストレスからの解放は、内なるウェルビーイングから生まれる、穏やかな佇まいと健やかな輝き(ナチュラルな美しさ)を支えてくれるものなのです。
2. 五感を研ぎ澄ます旅:ドラマの舞台を巡るリトリート

Unity Tampere クレジット: Visit Tampere
現実からの「逃避」ではなく、自分自身と「再びつながる」プロセス
高部: ドラマ『BLOOD & SWEAT』の舞台となったタンペレは、深い歴史と豊かな自然が見事に共存している街です。多忙な日本の女性たちが、五感を刺激し、マインドを「リセット」するリトリート体験として、これらのロケーションを訪れることにはどのような価値があると思われますか?
ヨケラ: タンペレの最も特別な魅力は、都市文化と大自然が美しく調和している点にあります。ほんの数分のうちに、歴史的な産業建築の街並みから、静寂に包まれた森や湖へと移動することができます。
現代の暮らしでは手に入りにくくなっている「物理的な広がりと心のゆとり」が、ここにはあります。澄んだ空気、水のせせらぎ、雨上がりの森の香り、そして湖の静けさが、眠っていた五感を優しく呼び覚まします。
一般的な旅先とは異なり、タンペレは人々を「スローダウン」へと誘います。
- 湖のほとりを歩く
- サウナの後にただ静かに佇む
- 雪を踏みしめる音に耳を澄ませる
- 夏の夕日を眺める
多くのゲストが、フィンランドを「ようやく自分の本当の思考を取り戻せる場所」と表現してくださいます。この旅は現実からの逃避ではなく、自分自身と「再びつながる」ためのプロセスです。罪悪感なく休むという許しを通じて、より健やかなリズムを取り戻す、深い癒やしとなるはずです。
3. 自然と「タイムレスな美」の調和:北欧の流儀

Sara Hildén Art Museum & Sculpture Park クレジット : Photo: Jussi Koivunen
完璧さよりも、自分の肌になじむような心地よさを大切に
高部: サラ・ヒルデン美術館とそこから望む息をのむような湖畔の景色のように、タンペレはアートと自然が溶け合う街です。「自然に身を浸し、感性を豊かに育む」というフィンランドの哲学が、最終的にその人の洗練された佇まいや「タイムレスな美しさ」にどのように表れていくのかを教えてください。
ヨケラ: フィンランドにおいて、美とは「ありのまま(本物)であること」そして「自然との調和」に深く結びついています。自然の中で過ごす時間は、特別なアクティビティではなく、感性や心を育むために不可欠な「栄養」のようなものです。
フィンランドにおける「タイムレスな美しさ」とは、穏やかさ、自信、シンプルさ、そして自分自身の肌になじむような心地よさと結びついています。完璧さを追い求めることよりも、ナチュラルな佇まい(存在感)が大切にされるのです。
心が満たされ、周囲の環境と調和しているとき、その美しさはその人の振る舞いや佇まいとして、自然と外側へ溢れ出します。
過剰さではなく、明瞭さ、機能性、そして感情に対して誠実であること。フィンランド流のウェルビーイングとは、内なる調和(インナーハーモニー)を創り出すことに他なりません。本当の気品や美しさは、その揺るぎないバランスから自然と芽生えるものだと、私たちは信じています。
💡 ドラマの世界観を体感する、タンペレの主要ロケ地ガイド

Hiedanranta(ヒエダンランタ地区) クレジット : Visit Tampere
| スポット名 | 特徴・魅力 |
|---|---|
| Finlayson(フィンレイソン地区) | 1820年創業の旧紡績工場を中心とした赤レンガ造りの街並み。現在はレストランやミュージアムが集まるレトロモダンな人気エリア。 |
| Unity Tampere | トリコット工場をリノベーションした新しい都市型滞在拠点。産業の歴史と北欧のデザイン・ファッション文化が融合した空間。 |
| Sara Hildén Art Museum | ネシヤルヴィ湖畔に佇む、自然とモダニズム美術が融合する美術館。美しい彫刻公園に囲まれ、インスピレーションを得られる場所。 |
| Hiedanranta(ヒエダンランタ地区) | 旧工業地帯を再開発したカルチャー発信地。地域のサウナをはじめ、様々なショップが並びます。中心部からトラムでアクセス可能。 |
| Tampere City Hall | 1890年に完成したネオ・ルネサンス様式の歴史的建造物。中央広場に面し、街の歴史を物語る。 |
| Mustalahti Harbour / M/S Intti | 夏季にグルメやライブを楽しめる開放的な港。チャータークルーズ「M/S Intti」で湖上からの贅沢なプライベート時間を体験できる。 |
世界のサウナ首都で本物を体験する
タンペレ市内および周辺には、フィンランド最古の公衆サウナをはじめ、70以上の公衆サウナが点在しています。ドラマにも登場する「サウナ」と「アイススイミング(凍った湖に入る体験)」は、五感を解放し、心身を究極のウェルビーイングへと導く最高のアクティビティです。
都市の洗練と、手つかずの豊かな自然。その絶妙なバランスが生み出すタンペレの空気感は、私たちに「本当の心地よさ」と「内側から輝くタイムレスな美しさ」の本質を教えてくれます。次のホリデーは、心と体を丁寧に洗い流す、フィンランドへのリトリート旅を計画してみませんか?
Editor's Note(エディターズノート)
情報が溢れ、あらゆる物事がハイスピードで変化していく現代社会。私たち日本の女性は、無意識のうちに多くの役割を背負い、完璧であることへのプレッシャーを抱えがちです。ビジネスの最前線で成果を求められ、あるいはプライベートな役割を全うしようと、日々を駆け抜けています。
今回、Visit Tampere のヘリ・ヨケラ氏のお話を伺う中で、深く胸に響いたのは、フィンランドの人々が実践している「罪悪感なく休むという許し」、そして「空白の空間」という美しい思想でした。
彼らにとってのサウナは、単なる一時的なウェルネストレンドではありません。それは、まとっている全ての肩書きや衣服を脱ぎ捨て、誰とも競わず、ただ「ありのままの自分」として存在するための静かな聖域です。熱い蒸気に包まり、澄んだ湖の水に身を浸す――その温冷のリズムの中で、彼らは心の中のノイズを洗い流し、自分自身の本当の思考を取り戻しています。
完璧さを追い求める引き算の美学ではなく、自然の調和の中に身を委ねることで生まれる「内なる調和(インナーハーモニー)」。それこそが、年齢を重ねても揺るぎない、あの洗練された佇まいや「タイムレスな美しさ」の正体なのだと確信させられました。
ドラマ『BLOOD & SWEAT』が描く重厚なサスペンスの舞台でありながら、一歩足を踏み入れれば、息をのむほど美しい静寂の森と湖が広がる街、タンペレ。
過剰なものを削ぎ落とし、自分の感情に誠実であること。そんな北欧の流儀に触れる旅は、きっと私たちの五感を優しく呼び覚まし、新しい健やかなリズムを教えてくれるはずです。表面的な美しさではなく、しなやかな強さと内なる輝きを手に入れるために。次の目的地には、心と体を丁寧にリセットできる、この世界のサウナ首都を選んでみてはいかがでしょうか。
シンデレラフィット編集長 高部 直哉
(取材協力・写真提供:Visit Finland / Visit Tampere)

